前奏に歌詞をつけてみる【「ドレミ」で歌うよりも内容を伝えられる】
歌曲やオペラアリアでは、歌の旋律と同じ旋律が前奏にあることがよくあります。
そんな時、何も考えず「ドレミ」で感じて弾くよりも良い方法があります。
それは、歌詞をつけて歌いながら弾いてみることです。
理由は、その方が歌詞の内容を音だけでも伝えられるからです。
ピアニストは「ドレミ」で歌ってしまう
ピアノには歌詞がつけられません。
ですが、練習の時には歌いながら弾けば歌詞をつけられます。笑
歌曲やオペラの場合は特に、旋律に歌詞をつけて練習することが必要だと言えるでしょう。
歌詞で歌うことの利点
- 言葉のニュアンスを表現できる
- 歌詞の内容を音だけで伝えられる
言葉のニュアンスを表現できる
言葉にはアクセントやニュアンスがあります。
その微妙な表現を、音だけでも再現(表現)する必要があります。
歌詞の内容を音だけで伝えられる
オペラが大量生産された時代には、同じ作曲家が別の曲で、同じ旋律をもう一度使うことがありました。
喜びを表現する曲で使った旋律を、悲しみを表現する曲で使うこともあったのです。
しかし基本的には、作曲家は歌詞の内容から旋律を作ります。
その内容を表現するためにも、内容を知った上で、その旋律を奏でる必要があります。
まずは前奏に歌詞をつける
一番簡単な方法は、歌の旋律と同じ旋律が前奏にある場合に、そこに歌詞をつけることです。
このような曲はキリがないほどあると思いますが、具体例を出します。
ベッリーニ:《優美な月よ Vaga luna》
歌詞の冒頭です。
Vaga luna, che inargenti
queste rive e questi fiori訳:この岸辺や花々を銀色に光らせる優雅な月よ
前奏の最初は、歌の冒頭と全く同じ旋律ですので、その歌詞を当てはめます(Vaga luna, che inargenti)。
4小節目のアウフタクトからは、歌の旋律そのままではありません。
試しに、その次の歌詞(queste rive e questi fiori)を当てはめてみます。
こんな感じです。
こういう場合は曲の他の部分の歌詞を当てはめることもできます。
前奏の終わりの「チャン、チャン」は、適当に「Ah Ah」としてみました。
言葉でも良いと思いますし、感嘆詞でも良いと思いますが、息を吐いた方が良さそうです。
言葉のニュアンスを再現する
次に、つけた言葉を再現します。
最初の言葉「vaga(優美な)」は「va-」にアクセントがあります。
ですので、最初の右手の8分音符2つは均等ではなく、最初の音(As)の方が少し長くなります。
※やりすぎるとおかしくなります。
その他も同様です。
歌詞の内容を音だけで伝える
これは難しいですが、ただ「ドレミ」で歌いながら弾くのとは格段に変わると思います。
この曲は、愛する人への気持ちを月に打ち明けている曲です。
もっと単純化して言えば、「愛する気持ち」を歌っています。
そんなことを考えながら弾くだけでも変わります。
まとめ
まずは、前奏が歌と同じ旋律の時に、歌詞をつけてみるのが簡単です。
そこから、間奏や合いの手にも応用していくことができます。
同じような曲を、他にも探して歌詞をつけてみてください。
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高橋健介 KENSUKE TAKAHASHI Official Website
ピアニスト 高橋健介の公式ウェブサイトです。埼玉県出身。大宮光陵高校音楽科ピアノ専攻卒業。東京藝術大学楽理科を首席で卒業。同大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。在学中、同声会賞、アカンサス音楽賞、大学院アカンサス音楽賞を受賞。日本声楽家協会講師、二期会研修所ピアニスト。