バッハ=ブゾーニ:シャコンヌ 楽曲解説

楽曲解説

バッハ=ブゾーニ:シャコンヌ

イタリアで生まれ、ドイツで活動したフェルッチョ・ブゾーニ Ferruccio Busoni(1866 – 1924)は、優れたピアニストだっただけでなく、作曲家、編曲家、指揮者、教育者などとして多方面で業績を残した。また、バッハの楽譜校訂者としても名を残しており、オルガン曲を中心に多数の編曲も手がけた。ブゾーニは幼い頃から、クラリネット奏者として名高かった父にバッハをできるだけ勉強するようにと言われていたこともあり、熱心に研究したのである。この作品の原曲は《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番》BWV 1004の最終楽章であるが、ブゾーニだけでなく、ブラームス(左手版編曲)をはじめとして多くの作曲家によって編曲が行われている。

「シャコンヌ」とは、16世紀スペインの舞曲に由来する形式で、反復される短いバス声部の上で次々と変奏が行われていくという特徴をもつ。ブゾーニの編曲は、原曲の構成にほぼ忠実ながらも、ピアノという楽器の可能性を最大限に引き出すために音の付加や拡張を行っており、それが見事に成功しているために今日では重要なピアノ・レパートリーの位置を占めている。ブゾーニは妻に宛てた手紙(1913年7月22日)で、「トランスクリプション(編曲)の技法によって、ピアノは音楽のあらゆる分野の財産を手に入れることができた」と述べているように、トランスクリプションというジャンルを非常に重要視していたのである。