モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K. 282(K 6 .189g)楽曲解説
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K. 282
このソナタは、モーツァルトのピアノ・ソナタの中でも特異な存在である。第1楽章が緩徐楽章(アダージョ)で始まること、メヌエットをもつソナタであることがその理由である。この2つに共通するのは、《トルコ行進曲付き》のソナタK. 331のみである(第1楽章冒頭はアンダンテ)。1775年にミュンヘンで書かれた一連のソナタ(全6曲)は、完全な形で残っている最初のソナタ群で、その4曲目にあたるのがこの作品である。ミュンヘンのデュルニッツ男爵のために書いたと推測されている。モーツァルト自身もマンハイム・パリ旅行の際に好んで演奏した。
先に述べたように、第1楽章 (Adagio 4/4拍子)はアダージョで始まる異例の楽章である。緩やかで優美に始まった旋律は、次第に装飾を纏っていく。第1主題は再現されないものの、同じ主題に基づく小さなコーダを添えて終わる。第2楽章 (MenuettoⅠ – MenuettoⅡ – MenuettoⅠ 3/4拍子)は、トリオをもつメヌエット楽章である。トリオ部分に当たるメヌエットⅡでは装飾が加わり、優雅な味わいが増していく。第3楽章(Allegro 2/4拍子)は、オクターブ跳躍を伴う華やかな第1主題で始まり、快活で煌めくように駆け抜けていく。