メニューインとヨガ【楽器を持たない練習法と呼吸法】

練習 音楽家

以前『ハタヨガの真髄』という本を読んでいたら、最初の方の「推薦の辞」を書いているのがメニューインでした。

このメニューインって、あのヴァイオリニストのメニューイン!?

そうです。ヴァイオリニストのメニューインは、ヨガ行者アイアンガーに出会い、ヨーロッパ各地でヨガを広めた人でもあるのです。

メニューイン

ユーディ(イェフディ)・メニューイン Yehudi Menuhin(1916-1999)は、アメリカ出身のヴァイオリニストです。

いわゆる神童としてデビューして、世界的に活躍しました。

ところが、第二次大戦中の過労によって、身体の異変に気づき始めます。

戦中は、連合軍慰問のために、500回以上の演奏を基地や病院で行ったそうです。
軍用機や潜水艦に乗って移動したりしていたそうで、その過程での異変だったとのこと。

その後、ヨガに出会い、立ち直します。

1952年にヨガ行者アイアンガーと親交を結び、彼がヨーロッパ各地にヨガセンターを設立するのを支援しました。

『ハタヨガの真髄』「推薦の辞」

アイアンガーの著作、『ハタヨガの真髄』では「推薦の辞」を寄せています。

ヨガを実践することにより、物事の基準や釣り合いについて、ある始源的な感覚が喚び醒まされる。人間の最初の道具、つまり自分自身の肉体に即すなら、それを思うままにあやつり、心身の共鳴と調和を最大限に推し進めることを私たちは体得するのである。

ヨガの様子

メニューインが三点倒立している映像です。

また、体のリラックスから、いかにヴァイオリンの構えのポジションに入るかも参考になります。

『ヴァイオリンを愛する友へ』

『ヴァイオリンを愛する友へ』という本は、メニューインが70歳の1986年に出版されました。

ヴァイオリン学習者を対象にはしていますが、メニューインの思想や音楽観も知ることができます。

メニューインは、演奏の際の身体感覚を大切にしました。

体のあらゆる部分が、ほかの骨、筋肉、四肢と調和したときに初めて、最高の動きを示すということだ。私にとって ヴァイオリンの演奏はそうした状態をさしており、その過程で演奏者の身体は自己を自覚し、内面的な調和を感じとる。

こういった感覚は、ヨガから学んだことです。

「動きとバランスに対する鋭敏な感覚が私たちの最終目標」と言っています。

立ち方

「はじめに」では、根本的な考え方について述べられます。

その後すぐに、立ち方の説明に入ります。
まず、二本の足で立つとはどういうことか。

特に、足指を広げて、土踏まずを強化することに着眼しています。
立って演奏するので、体を支える足が大事ということです。

これは歌手などにも当てはまるでしょう。

呼吸法

次に、ヨガの呼吸法が紹介されています。

片鼻ずつ呼吸する「ナディショーダナ」と呼ばれるものです。

基本的な呼吸法に関しては、『禁煙ヨーガ呼吸 』という本がおすすめです。

Kindleで200円くらい。
「禁煙」するしないに関わらず使えます(※私は全く吸いません)。

この本で紹介されている7つの呼吸法のうち、2つ目の呼吸法です。

シャドー・ヴァイオリン

その他にも、示唆に富んだ内容ばかり述べられているのですが、その中から一つ紹介します。

「シャドー・ヴァイオリン」 と名付けられているもので、実際に楽器を持たずに身体の動きを意識します。

「自分の姿勢についてのイメージ、ヴァイオリンを弾くさいに占める空間の感覚を養う」という目的があります。

写真1

手順は以下の通りです。

  1. 仮想の弓をもつ(実際のヴァイオリンと弓から離れた方が、自分の動きを把握するのがやさしい)
  2. 足を自然に広げて立ち、体重を両足に均等にかけ、演奏のポジションをとる
  3. ヴァイオリンを弾く動作をとり始める(写真1)
  4. 次に弓を手にする
  5. 右手の親指と人差し指の間に弓を置いて、弓を動かす →身体の動きを感じる

実際に楽器を持たない、ということが大事だと思います。

要は、「イメトレ」をして、体の動きを敏感に感じるということです。

メニューインも言っている通り、実際に楽器に触れてしまうと、弾くことに夢中になってしまって、身体に敏感に反応しにくくなります。

まとめ

今でこそ、演奏家のためのヨガとか、演奏家のための呼吸法の書籍や講座が目立つようになってきましたが、メニューインはその先駆者かもしれませんね。

ヴァイオリン以外の楽器でも、応用できることばかりです。

グールドとの映像も残っています(グールドはもちろん暗譜)。

ストラヴィンスキーも三点倒立をしていた人でした。