愛する気持ちを表現するってどういうこと!?【プルチックの「感情の輪」より】

思考・日常(音楽) 演奏

オペラや歌曲をやっていれば、「愛する」気持ちを歌う曲は多いです。

でもどうやって表現するかわからない、そもそも愛ってなに?といった課題にぶち当たるかもしれません。

そんな時に参考になるのは、プルチックの「感情の輪」という考え方です。

この考え方では、「愛」を「喜び+信頼」で捉えます。

話題になったツイート

最近、Sangminさん(@gijigaeさんのツイートが巷では話題になりました。

心理学者、Robert Plutchikによる、感情の輪。関連した単語が一目で分かるのがとても良い。感情を表す単語を知っていれば微妙なニュアンスも表現できる。

感情の輪の日本語版。隣同士の感情をあわせて別の感情を表しているのも斬新です。
■ 喜び(Joy)+信頼(Trust)=愛(Love)
■ 安らぎ(Serenity)+関心(Interest)=楽観(Optimism)
■ 悲しみ(Sadness)+驚き(Surprise)=失望(Disapproval)

プルチックの感情の輪とは

ロバート・プルチック Robert Plutchik

アメリカの心理学者で、1980年に「感情の輪 Wheel of emotioins」という感情の分類を体系化したものを発表しました。

それが、上記のツイートの図です。

詳しくは、以下のサイトをご覧いただきたいのですが、人間には8つの基本感情があって、それらの組み合わせで、より複雑な感情を表現できるというものです。

8つの基本感情

以下の8つの感情が、この考え方の基本になります。

喜び、信頼、心配、驚き、悲しみ、嫌悪感、怒り、予測

「喜怒哀楽」をより深堀りしたものと言えるかもしれません。

さらに強い感情

基本感情がさらに強くなると、以下の感情になります。

恍惚、敬愛、恐怖、驚愕、悲嘆、憎悪、激怒、警戒

愛(Love)は喜び(Joy)と信頼(Trust)

愛(Love)は、喜び(Joy)と信頼(Trust)の組み合わせと定義されています。

まず喜び(Joy)を表現する

愛を表現するときに、まずは「喜び」を表現する。
これは音楽、特に歌曲やオペラでは使える手段かもしれません。

喜びだと誰もが想像しやすいです。

よくオペラの授業で、いまいち愛の表現ができない生徒に対して先生方が言います。

「大好物の料理が目の前にあると思って」

「欲しかった物を買ったときの気持ちで」

これって結局、「喜び」です。

こういうことを思いながら歌うだけで、表現が変わるのです。

本人は美味しいものを想像しているだけかもしれません。
ですが結果的に、愛している気持ちを歌っているように聴こえる(見える)ようになるのです。

信頼

信頼とは、「信じてたよりとすること」(『日本国語大辞典』より)です。

愛には「信じる」という要素が入ってきます。
それが喜びに組み合わさるのです。

ただ実際に、愛と信頼を想像しながら歌うことは難しいです。

ですので、先に「喜び」です。
その心の奥底には信頼があると意識することから始めるのが良いと思います。

「喜び」と「信頼」のさらに強い感情

図の考え方だと、「喜び」の先には、「恍惚(ecstacy)」があります。

恍惚とは、「物事に心を奪われてうっとりすること」(『日本国語大辞典』より)です。
英語の「エクスタシー ecstacy」の訳語ですね。

ちなみにエクスタシーを調べてみると、

「感情・官能が高まってわれを忘れ、うっとりした状態になること」(『日本国語大辞典』より)

とあります。こちらのほうが、言語の意味に近いはず。

また、信頼の先には、「敬愛(adoration)」があります。

つまり「愛」とは、「敬愛」と「恍惚」で捉えても良いのかもしれません。
ですが、先ほどの「喜び」と「信頼」のほうが、まずはわかりやすいですね。

なんか大人な話になってくるのでこれ以上踏み込みません。

オペラや歌曲での感情はなるべく単純化したほうが伝わりやすい

音楽表現では、この図の中心に近いところを意識するというのがポイントです。

オペラや歌曲では、グレーゾーンは伝わりにくいからです。

嬉しいけど、ちょっと悲しくて、すごく驚いている

という感情を一声で、一音で表現してと言われても、難しいですよね。

まとめ

愛するとは、もっと深い気持ちだ、と言う反論もあるかもしれません。

でも少なくとも演奏では、なるべく明快なほうが人に伝わりやすいです。

そこでこの「感情の輪」の理論を借りて、まずは「喜び」を表現するのが第一歩となるかもしれません。