ブラームス:《メロディのように(旋律のように)Wie Melodien zieht es》作品105-1 対訳

歌曲

作詞:クラウス・グロート Klaus Groth(1819-1899)
作曲:ヨハネス・ブラームス Johannes Brahms(1833-1897)

Wie Melodien zieht es
Mir leise durch den Sinn,
Wie Frühlingsblumen blüht es,
Und schwebt wie Duft dahin.

それはメロディのように
静かに心に通っていく
それは春の花のように咲き
香りのように漂う

Doch kommt das Wort und faßt es
Und führt es vor das Aug’,
Wie Nebelgrau erblaßt es
Und schwindet wie ein Hauch.

だが言葉が湧いてきて、
それをつかもうとして 目の前に導くと
まるで灰色の霧のように色あせ
吐息のように消えていく

Und dennoch ruht im Reime
Verborgen wohl ein Duft,
Den mild aus stillem Keime
Ein feuchtes Auge ruft.

それでもなお、詩行の中には
香りが秘められている
静かな萌芽から優しく
涙ぐんだ目が呼び寄せたものだ

所感

やはり言葉には限界があります。
それでも確かに言葉にするからこそ伝えられることもあり、そこには書き手の想いが少なからず反映されているのだと思います。

曲中に何度も出てくる、「それ es」とは愛する想いのことでしょう(作曲当時、詩人も作曲者も若い歌手に惹かれていたようです)。

でもそれがダイレクトに書かれていないのが魅力的です。
「想い」も、若い人のような直球のものではないでしょう。

こちらは、ハンス・ホッターとジェラルド・ムーアの1965年の演奏です。
ホッターは56歳、ムーアは66歳の時の録音です。

素敵な演奏です。
この曲が作曲されたのは、ブラームス53歳、グロート67歳の時ですから、なんとなく近い心境に至っているのかもしれません。