「畏敬の念」は体内の炎症レベルを下げる【「過去・現在・未来」を結びつける音楽の力】

思考・日常(音楽)

音楽を聴いたり弾いたりして、時を忘れたと言う経験は誰もがありますよね。

今回は、音楽に「畏敬の念」を抱くということが、人間にどう作用するのかをまとめました。

鈴木祐さんの『最高の体調』によると、畏敬の念を抱くことによって、体内の炎症レベルを下げる効果があるそうです。

また、畏敬の念を感じることで「過去・現在・未来」という時間に変化が起きます。

鈴木祐『最高の体調』

鈴木祐さんは、メンタリストDaiGoさんと一緒に仕事をしていることで有名になりました。

10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ね、ブログや書籍で紹介している方です。

『最高の体調』は、進化論をベースに「文明病」を解消することを目的とした、素晴らしい本です。

肥満・不眠・鬱・不安などの「文明病」は古代には存在しなかったそうなんですよね。
実際に、現代でも狩猟採集生活をしている部族にはそのような症状はほぼ見られないそうです。

進化のミスマッチ

ハーバード大学の古代人類学者ダニエル・リーバーマン氏が提唱したフレームワークを紹介しています。

古代と現代のミスマッチが起きるパターンを3つの枠組みでとらえました。

  • 多すぎる:古代には少なかったものが、現代では豊富すぎる
  • 少なすぎる:古代には豊富だったものが、現代では少なすぎる
  • 新しすぎる:古代には存在していなかったが、近代になって現れた

具体的に、これらを現代に当てはめています。

  • 多すぎる…摂取カロリー、人口密度、人生の価値観
  • 少なすぎる…睡眠、運動、自然との触れ合い
  • 新しすぎる…デジタルデバイス、インターネット

近年では、「新しすぎる」の部分が加速してますね。

人生の価値観が「多すぎる」という点に関しても、価値観はますます多様化しているように思います。
どういう生き方が良いのか、なんの仕事をするべきなのか、正解はありません。

文明病を引き起こす要素①「炎症」

炎症はヒトの細胞レベルで起きる火事のようなもので、鬱・肥満・糖尿病などの原因と考えられているそうです。

炎症によるパフォーマンス低下がわかりやすいのは、「風邪」です。

免疫システムがウイルスと戦い続け、その結果として体には発熱や鼻水などの諸症状が起き、熱のせいで脳が正しく機能しません。

文明病を引き起こす要素②「不安」

農耕によって起こった変化

  • 未来が遠くなった(時間感覚の変化)
  • そこに不安が生まれた

農耕がもたらした変化のなかでも、もっとも現代人への影響が大きいのが「時間感覚の変化」です。

種をまいて、一定期間待って、収穫する、という一連の流れは、狩猟採集民にはありませんでした。
1年も先のことを考えて行動する習慣は、それまでの人類にとってまったく未知のものだったのです。

そこに、ちゃんと収穫できるのだろうか…といったような「不安」が生まれました。

農耕民が抱く不安と、狩猟採集民が感じていた不安は全く性質が違ったのですね。

畏敬の念をもつと体内の炎症レベルが下がる

ここまでが、全体の概要でした。
ではどうすれば炎症や不安を少しでも抑えることができるか。

それが、

「畏敬の念」を抱く

ことです。

心理学でいう「畏敬」とは、なにか自分の理解を超えるような対象に触れた際にわきあがる、鳥肌が立つような感情を指します。

研究

カリフォルニア大学や、スタンフォード大学の種々の実験から、「畏敬の念には、炎症物質を適切なレベルに保つ作用がある」ことがわかりました。

「自然のなかを歩いたり、素晴らしいアートに触れたりといった活動は、いずれもポジティブな感情を引き起こし、健康や長寿に大きな影響を持つ」ということです。

畏敬の念を引き起こしやすいポイント

1番感じやすいのは「宗教」です。

現代の日本人にとっては、実感は薄いかもしれませんが、神社やお寺に行って「畏敬の念」を感じた経験は誰にもありますよね。

宗教以外で、畏敬の念を引き起こしやすいポイントは以下の3つです。

  • 自然
  • アート

音楽には、この3つが全て入っているのです。

  • 自然…調和論、黄金比、「宇宙的音楽」、森での演奏
  • アート…音楽そのもの
  • 人…作曲家の存在、過去の巨匠たちの存在、尊敬する身近な演奏家の存在

自然

自然については、単なる山川草木だけを意味するわけではないようです。

もちろん、森で演奏するといった『ピアノの森』のようなことが日常的にあるのが1番良いとは思いますが、宇宙や人間の謎を解き明かすようなフレームワークを知ることも「自然」に入ります。

アート

アートは「大きさ」と「新奇さ」の 2つの要素に分類されています。

具体的にあげると、このようなものでしょう。

  • 大きさ…壮大な曲、空間支配力の高い演奏
  • 新奇さ…斬新な和声、刺激的な演奏

言うまでもないですが、過去の作曲家や名演奏家たち、もしくは身近の尊敬できる作曲家や演奏家などでしょう。

畏敬の念を感じることによる「時間感覚の変化」

畏敬の念を感じると何が起こるかというと、「時間感覚の変化」です。

  • 自然や芸術といった息の長い存在と一体化するような感覚
  • 自分と外部の境界が曖昧になる
  • 未来が今に近くなる

素晴らしい音楽を目の当たりにした時、その対象と一体化するような感覚を味わい、自分と対象の境界が曖昧になり、時を忘れる…

その結果、「頭の中の時間感覚は未来と現在を永遠でパッケージしたような状態」になる。

つまり、

未来が今に近くなる

ということです。

「遠い未来」というのは、人間にとって「不安」を呼び起こすものでした。
未来が近くなるということは、不安がその瞬間に消えるということです。

素晴らしい演奏に出会うと、時間が止まったような感覚を味わうことがあります。

また、素晴らしい曲の楽譜をみているだけで、時を忘れるということもありますね。

永遠の時間には過去・現在・未来のすべてがふくまれるため、意識のなかではすべての時間が今になったのと変わりがありません。つまり、未来が今に近づいたわけです。

まとめ

音楽には「畏敬の念」を感じることのできる要素が多いです。

特に、クラシックには「過去の時間」が刻まれています。

その過去と繋がることのできる時間が、クラシックの魅力と言えるのではないでしょうか。