56年前からソーシャルディスタンスを保っていたグレン・グールド【電話でリハーサル!?】
2020年、世界的に新型コロナウイルスが猛威を振るっています。
ソーシャルディスタンスが叫ばれる日々ですが、56年前からソーシャルディスタンスを保っていたピアニストがいました。
かのグレン・グールドです。
人との接触を極度に嫌い、素手で握手もしないほどの潔癖症でした。
グレン・グールド(1932-1982)
ウィキペディアのパロディサイト、アンサイクロペディアのグールドのページがめちゃくちゃ面白いんですよね。
カナダ生まれ、スタジオ育ちの歌手、ボーカリストである。
「ピアノ伴奏が世界一上手い歌手」
いまだにボーカリストとして評価されないまま現在に至っている。
などなど。
まあ録音を聞いた人ならわかるかと思いますが、ピアノを弾きながら歌っている声が入っているんです。
それを皮肉で言っているわけです。
ステージから引退
1964年、32歳の時です。
人気の真っ只中、コンサート活動の中止を宣言しました。
「一回性」に支配される生演奏というものに対し疑問を呈していたからです。
そこから、スタジオでの録音マイクを通じた活動が始まりました。
電話でリハーサル!?
グールドには変わった習慣がたくさんありましたが、そのうちの一つを紹介します。
彼は大の電話好きでした。
人と滅多に会わない代わりに、限られた友人と電話でコンタクトを取っていました。
・起きたらいくつか電話(午後遅くまで寝ている) ・午後11時には、より長い電話(午前1時か2時まで)
友人の証言もいくつか残っています。
- いきなり自分が考えていることを話しはじめる
- 相手の都合も聞かず、挨拶もなし
何の気遣いもありません。
また、面白いのは以下です。
- 電話でエッセイや本を延々と読む
- 電話で音楽を始めから終わりまで口ずさむ
友人の証言でも、「彼が電話でリハーサルをするのが好きだった」とあります。
頭の中で練習
グールドはピアノを「弾いて」練習する人ではなかったのです(弾いても1日1時間とか)。
何せ、「一番良い演奏ができるのは、一ヶ月くらいピアノに触っていない時」と言った人です。
ただ音楽のことはほとんど1日中考えていました。
頭の中で練習していたのですね。
その一環として、電話で歌うというのもあったのだと思います。
相手が電話中に眠っても気づかなかったそうです。
没頭して読んだり歌っていたのでしょう。
当然、電話代は膨大な額だったようです。
異常なほどの潔癖症
有名なエピソードとしては、電話で相手がくしゃみをしたら、電話を切ったというもの。
握手も基本的にはせず、するとしてもいつも手袋をはめていました。
他人との接触を極端に恐れていたのです。
バッハ《パルティータ2番》の練習風景
これは貴重な映像です。
途中で弾くのをやめて、歌いながら外を眺めて、また弾き出す。
「ピアノ伴奏が世界一上手い歌手」の歌声が盛り沢山に聞けます。笑
まとめ
ソーシャルディスタンスの観点からみると、万全の対策です。笑
グールドがこの2020年に生きていたらどうしていたか、何も問題はなく日常を過ごしたのではないかと思います。
ただ、演奏の一回性を嫌っていたわけですから、生配信などはしてくれなかったでしょう。
録音機材やzoomなどの機能には間違いなく興味を持ったのではないでしょうか。
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高橋健介 KENSUKE TAKAHASHI Official Website
ピアニスト(ピアノ)高橋健介の公式ウェブサイトです。埼玉県出身。大宮光陵高校音楽科ピアノ専攻卒業。東京藝術大学楽理科を首席で卒業。同大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。在学中、同声会賞、アカンサス音楽賞、大学院アカンサス音楽賞を受賞。日本声楽家協会講師、二期会研修所ピアニスト。