自分でめくれる譜面作りの大切さ【練習でギリギリめくれても本番でめくれない】
前回、自分で譜めくりできる楽譜の作り方① 【伴奏が同じで言葉が異なる時に、歌詞を下に貼る(La danzaを例に)】を書きました。
今回は、そもそもなぜそこまで「自分でめくれる譜面作り」にこだわるのかという前提のお話です。
アンサンブルでピアノを弾く際は、基本的に楽譜を置くのが主流ですので、多くの方に当てはまる内容かと思います。
自分でめくりをする場合のお話をします。
なぜ「自分でめくれる譜面作り」にこだわるか
稽古では音が抜けても良い場合があります。
しかし、コンサートで弾くとなると、やはり音は抜きたくないですよね。
自分の経験でもそうですし、色々な方の本番を見ていても、譜めくりの瞬間に「何らか」が崩れ、「何らか」が起こることが多いです。
練習で「ギリギリ」めくれても本番でめくれない
練習で「ギリギリ」でしか譜めくりできない箇所は、本番で「ちゃんと」めくれる可能性はかなり低いです。
理由は以下の通りです。
- 衣装によって動きが変わるから
- 緊張してめくりが慎重に(余計時間がかかる)or 雑(一か八か)になるから
衣装によって動きが変わるから
男性の場合、ジャケットを羽織ったり、カフスを付けたりすると、手や腕のあたりの動きは微妙に変わります。
そうすると、譜面台の上の楽譜までの動きも微妙に変わり、0.1秒でも遅れたらアウトという場合、対応できなくなる可能性があるからです。
(女性がドレスを着る場合、上半身はむしろ動きやすいのでしょうか)。
そもそも動きやすい衣装を着るという、それ以前のお話かもしれません。
緊張してめくりが慎重に(余計時間がかかる)or 雑(一か八か)になるから
緊張すると、やはり譜面台までの手や腕の移動ですら変わります。
緊張した場合に考えられるのは、
- 慎重になって時間がかかってめくれない
- 勢い余って(雑になって)2枚めくってしまう
などです。
どちらも避けたいです。
充分な余裕をもってめくれるようにする
以上の理由から、余裕をもってめくれるように準備しておく必要があります。
そう思うようになったのも、過去に何度か失敗してきたからです。
自分でめくる際に起きやすい現象
自分自身の経験からも、コンクール等で色々な方を見ていても、譜めくりをする前後にミスをする可能性が高くなります。
- めくる前に焦ってミスをする、抜ける
- めくれなくて焦ってミスをする、抜ける
- めくった勢いで楽譜が落ちる(落ちそうになる)
めくる前に焦ってミスをする、抜ける
0.1秒を競うような「ギリギリ」の譜めくりの場合、めくりの箇所が近くにつれて緊張してきます。
「上手くめくれるかな…」「失敗したらどうしよう…」
この緊張や不安がミスを引き起こす可能性を高めます。
めくれなくて焦ってミスをする、抜ける
時間内にめくれなかった場合、パニックです。笑
「次めくれるのはどこだ」と頭を回転させますが、結局そんな場所はなく、音を抜いてめくることになってしまいます。
めくった勢いで楽譜が落ちる(落ちそうになる)
落ちたことはないですが、落ちそうになったことは何度かありました。
これは一番避けたい事態です。
空調の風の恐怖
特に怖いのは、ステージの空調の風です。
紙の楽譜で本番をする場合、ステージの空調の風がちょうど楽譜にあたり、風で飛ばされそうになることがあります。
リハーサルがあれば良いのですが(といってもリハと本番で空調が違う場合もあるので注意)、コンクール等の場合はリハが舞台でできないことが多いです。
そのような場合は、他の出演者を見て、大丈夫かどうか確認したりもします。
解決法
いくつか解決法をあげます。
- 譜面カバーを使う
- 楽譜の1ページ目の裏に厚紙を貼る
- 他の曲の楽譜を下に置く
- 楽譜をB4にする
- 譜面台をなるべく斜めに(後ろに)倒す
- 息で「ふーふ」して楽譜を押さえる
譜面カバーを使う
風が来ても楽譜が飛ばないように、譜面カバーを使うという工夫もできます。
藝大だと卒業の時に貰える、あれです。
似たようなものは市販でも買えます。
楽譜の1ページ目の裏に厚紙を貼る
楽譜の1ページ目の裏に厚紙を貼ることで、楽譜カバーのような役割を果たすので、飛ばされにくくなります。
他の曲の楽譜を下に置く
それと似たような方法で、コンサートなどの場合は、他の曲の楽譜を下に置くことで、楽譜カバー代わりになります。
ですが、これは要注意です。
下においた楽譜が、弾いている楽譜の間に挟まってしまうと(ジャバラ折りの製本の場合)、めくれなくなってしまうからです。
ちょっと言葉では説明しにくいですが、これはめちゃくちゃ注意すべきことです。
楽譜をB4にする
B4サイズだと、譜面台の上に楽譜が飛び出ないので、風が来ても安心です。
譜面台がカバーしてくれます。
楽譜のサイズは好みが分かれると思います。
私はなるべく大きい方が見やすいのでA3を使うことも多いですが、最近はどちらかというとB4を好みます。
理由は以下の通りです。
- 風の心配が少ない
- 紙が小さい分、多くのページを広げられる
詳細は今回は省きます。
譜面台をなるべく斜めに(後ろに)倒す
譜面台を斜めに(後ろに)倒すと、風が当たりにくくなることが多いです。
息で「ふーふ」して楽譜を押さえる
最終兵器は、自分の息です。笑
向こうから風がやってくる場合、こちらから風を送ればプラマイゼロになります。
わりと本気な見解ですが、あくまで応急処置なので本質的ではないです。
まとめ
結論、余裕を持ってめくれるように、準備することが大切です。
そのためにも楽譜作りには時間をかける必要があります。
「自分で譜めくりできる楽譜の作り方」シリーズは今後も書きますので、 また覗きにきていただけたら嬉しいです。
自分で譜めくりできる楽譜の作り方① 【伴奏が同じで言葉が異なる時に、歌詞を下に貼る(La danzaを例に)】
伴奏する時、基本的にピアニストは楽譜を見ます。その時に、「自分で譜めくりする場所がない」といった問題にはよくぶつかります。最近では電子機器で本番をやる人も増えてきて、めくるのがスムーズになっているとはいえ、まだ紙の楽譜で本番をやる人の方が圧倒的に多いです。そんな時に役立つ方法の一つを紹介します。
高橋健介 KENSUKE TAKAHASHI Official Website
ピアニスト 高橋健介の公式ウェブサイトです。埼玉県出身。大宮光陵高校音楽科ピアノ専攻卒業。東京藝術大学楽理科を首席で卒業。同大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。在学中、同声会賞、アカンサス音楽賞、大学院アカンサス音楽賞を受賞。日本声楽家協会講師、二期会研修所ピアニスト。
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