自分で譜めくりできる楽譜の作り方① 【伴奏が同じで言葉が異なる時に、歌詞を下に貼る(La danzaを例に)】
伴奏する時、基本的にピアニストは楽譜を見ます。
その時に、「自分で譜めくりする場所がない」といった問題にはよくぶつかります。
最近では電子機器で本番をやる人も増えてきて、めくるのがスムーズになっているとはいえ、まだ紙の楽譜で本番をやる人の方が圧倒的に多いです。
そんな時に役立つ方法の一つを紹介します。
「譜めくりできない」という問題
譜めくりを人にお願いすることもできますが、オーディションやコンクールなどに毎回、譜めくりの方を連れてくるのは難しいでしょう。
そんな時には、自分でめくれるようにピアニスト自身が色々と工夫します。
自分で譜めくりできる楽譜を作る方法
自分で譜めくりできるようにするために、ピアニストは楽譜作りの必要があります。
方法として考えられることをいくつかあげます。
- 楽譜を小さくコピーする
- めくれるところまでコピーして貼る
- めくれるところまで暗譜する
- 片手で弾ける場合は片手で弾いて、もう片方の手でめくる
その他にもあるかもしれません。
今回は、伴奏が同じで言葉が異なる時に、歌詞を下に貼るという方法を紹介します。
伴奏が同じで言葉が異なる時に、歌詞を下に貼る
ロッシーニの歌曲《踊り La danza》を例に、取り上げます。
ピアニストも見せ場が多い曲ですが、その分ずっと動いているので、一般的な楽譜だとめくる場所がありません。
ですが、この曲は1番と2番があり、ピアノの音形はどちらも同じです。
ですので、2番の歌詞をカッターで切り取り、1番の下に貼り付けます。
そうすると、このようになります(対訳が汚い字ですみません汗)。
貼ったものをさらにコピーしてあるので、あたかも最初から印刷されているように見えるかもしれません。
こちらは元の楽譜です。
下にフランス語が書いてあります。
あとは、間奏の後に、後奏の最後の部分を貼り付けます。
間奏と後奏は、最後の部分以外は同じなので、そこだけ貼り付ければ大丈夫です。
結果的に、1度めくるだけの楽譜が出来上がります。
前奏のフェルマータの後は、めくる時間があるのでその間に1度目めくり、後はそのままの状態です。
最終的に、B4が2枚半、つまりB5で5ページ分になりました。
これならグランドピアノの譜面台に乗ります。
最初の状態
前奏が終わり、2ページ目の折り目のところをめくった状態
後はそのままです。
1度めくるだけで済むようになります。
1番と2番で色を変える
上の画像でお気づきかもしれませんが、1番と2番で言葉の下に引く線の色(それに対応して対訳も)を変えています。
- 1番:赤
- 2番:青
その方が見やすいからです。
シューベルトの有節歌曲や、山田耕筰の《この道》でも同じことをしています。
手間はかかるけれど、一度作ってしまえばあとはラク
「楽譜を作る時間があるなら練習したい」と思う人もいるかもしれません。
しかし毎回自分でめくれずに練習してしまうと、いつまで経ってもその部分が「全て」弾けない状態になってしまいます。
あとでラクになることを予測して、楽譜作りに取りかかれるかがポイントです。
と書いている私も、本番の直前になって慌てて作ることもしばしば…笑
まとめ
アンサンブルをする場合、ピアニストにはこういう時間もあるのです。
声楽家にとっては、「そんな面倒なことしてるんだ」となるかもしれないですし、同業ピアニストにとっては、「わかるわかる」といった内容だったかもしれません。
このシリーズはまた書きたいと思います。
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高橋健介 KENSUKE TAKAHASHI Official Website
ピアニスト 高橋健介の公式ウェブサイトです。埼玉県出身。大宮光陵高校音楽科ピアノ専攻卒業。東京藝術大学楽理科を首席で卒業。同大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。在学中、同声会賞、アカンサス音楽賞、大学院アカンサス音楽賞を受賞。日本声楽家協会講師、二期会研修所ピアニスト。
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