音楽は時間芸術【78歳のバレンボイムを聴いて】
音楽は時間芸術
バレンボイム行ってきた。コロナ以前にはなかったようなサントリーホールの静寂にベートーヴェンの音楽が極度に結びついた特別な時間が幾度か訪れた。音楽は時間芸術なのだと再認識。至福の時間だった。世界中のオーケストラを振ってきて78歳でピアノに向かうとどんな景色が見えているのだろうか。
静寂(コロナ禍のコンサートにおける静寂)
コロナ以後に何度かコンサートに行って思うのですが、明らかに咳払いが少なく、静寂な空間になっています。
咳をしやすい方は外出を控えているというのもあるかもしれませんし、各々が気をつけているからかもしれません。
ほぼ満員のサントリーホール(約2000人程)ですら、ピアニッシモの時にも非常に静かです。
あまりの静寂で、目を瞑って聴いていると、自分1人しかその場にいないような感覚になりました。
それはなんとも至福の時間でした。
32番が終わった後の沈黙
天国的な第2楽章が終わった後、会場には数秒間の沈黙がありました。
体感で言うと、もっと長かったような気がします。
マーラーの第9番が終わった後に指揮者が手を降ろすまでの沈黙のような(毎回それが生み出されるかはわかりませんが)。
会場の2000人が一体となってその時を味わっているような感覚がありました。
そこにはベートーヴェンの音楽と、その余韻があったのです。
時間芸術
音楽に没頭すると時間を忘れます。
今回も、30分程のピアノソナタが5分か10分に感じました。
これは聴衆が時間を操られているとも言えます。
世界的歌手の究極のレガートを聴いた時、自分がつまみ上げられてフレーズが解決した時にフッと落とされてたような感覚になったことがあります。
まさにそれが常にありました。
この時、自分の中で時間が止まっているのだと思います。
そしてフッと我に返った時、曲が終わっている。
もっとミクロな単位では、フレーズごとのルバートや持っていき方にそれが行われているのですよね。
数字では表せないような微妙な伸び縮みや間です。
音自体の魅力
「音が良ければ何でも聴ける」
昔、誰かに言われたことがあります。
確かに音が良くないと、どんなに表現豊かに奏でられても引きつけないという面があると思います。
声楽で言ったら、それは声に当たります。
昨日の音は真珠のようなクリスタルな響きがしました。
平行弦の特注のピアノ
それはバレンボイムが生み出したものでもありますが、平行弦の特注のピアノを持ってきていたという面も多いにあると思います。
鍵盤も彼の手に合わせて作られているとか。
まとめ
音楽は時間芸術と言いましたが、究極的には空間芸術と言えるかもしれません。
その空間自体を支配する。そこには時間も含まれる。
世界中のオーケストラを振ってきて78歳でピアノに向かうとどんな景色が見えているのでしょうか。
その頭の中を覗いてみたいです。
こちらの音声でも配信しています。
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高橋健介 KENSUKE TAKAHASHI Official Website
ピアニスト 高橋健介の公式ウェブサイトです。埼玉県出身。大宮光陵高校音楽科ピアノ専攻卒業。東京藝術大学楽理科を首席で卒業。同大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。在学中、同声会賞、アカンサス音楽賞、大学院アカンサス音楽賞を受賞。日本声楽家協会講師、二期会研修所ピアニスト。