東浩紀「本質的なことばかりを追求するとむしろ新しいことは実現できなくなる」

思考・日常 思考・日常(音楽)

年末に少しだけ読み始め、新年一気に読みました。

会社の本体はむしろ事務にある

この本では、株式会社ゲンロンの生々しい経営状況についても語られます。

東浩紀さんは創作活動に夢中になるあまり、お金のことや経営は放置してしまい、何度か経営破綻の危機に陥ります。

研究成果でも作品でもなんでもいいですが、「商品」は事務がしっかりしないと生み出せません。研究者やクリエーターだけが重要で事務はしょせん補助だというような発想は、結果的に手痛いしっぺ返しを食らうことになります。

そのような経験をふまえて、この本でもっとも重要なことは以下の逆説的メッセージではないかと、著者は言います。

何かなにか新しいことを実現するためには、いっけん本質的でないことこそ本質的で、本質的なことばかりを追求するとむしろ新しいことは実現できなくなる。

著者にとって本質的なことは、本の執筆のようなことです。
言い換えれば、専門の哲学を究めていくことでしょう。

演奏家であれば、演奏することです。

ですが、会社の領収書の整理などの雑務をふまえた会社の経営を通して、哲学の実践をしていく。
そうすることで新しいことを実現していく。

そこに哲学が生まれていくというのです。

ぼくの哲学は、「本質的なこと」に閉じこもっていたのでは、けっして実現できなかったことでしょう。

音楽家も同じでは

私もここ一年くらいでやっと気づきました。
ただ演奏に磨きをかけるだけでは、次のステージにいけないということに。

もちろん「演奏に磨きをかける」ということは最も本質的なことですが、ある意味で最低条件、前提条件なのです。

それ以外に何ができるかの方が重要になってくることもあります。
他者との差別化という意味でもです。

最近、周りの音楽家でも起業したり、何か新しいビジネスをやる人が増えてきたように感じますが、これは素晴らしいことだと思っています。

もちろん、演奏以外にやることは膨大に増えるでしょう。
そのために遠回りもたくさんすると思いますし、一時的には本質から外れてしまうこともあるかもしれません。

それでも最終的には本質に辿り着く近道なのかもしれません。

まとめ

自分はまだ何も始めていないので、あくまで想像の話にはなってしまいますが、共感する内容でした。

今年は気軽にこちらのブログも更新していきたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。